柔道と合気道〜後編〜

前編では、柔道と合気道の歴史に触れ、両武道に縁があったことを述べました。後編である今回は、柔道との違いという観点で合気道を紹介してみたいと思います。

柔道と合気道の違いは、稽古形態の違いに現れているかと思います。

柔道の特徴は「乱取り」にあります。柔道では危険な技を「禁じ手」(反則)として定め、安全に全力で技の応酬が行える様にしました。この稽古形態を「乱取り」と呼びます。

一方、合気道の稽古形態の基本は「型稽古」です。修練する技を決めてから、技を掛ける人、受ける人を決めて反復稽古します。

しばしば「乱取り」と「型稽古」を優劣で論じようとする方がいらっしゃいますが、それぞれの稽古形態の特徴を考察し、その特徴を生かす事が大切なのではないか、と私は思います。

「型稽古」では「乱取り」と比べて、駆け引きなどを学ぶ事は難しいかも知れません。しかし、「乱取り」では行えない危険な技を修練できる事が「型稽古」の利点の一つかと思います。

合気道の技の特徴は、相手の手首や肘、肩の関節を極めながら押さえ込んでいく流れにあるかと思います。この際に用いられる技法の多くは、柔道では「禁じ手」(反則)です。

いわば、柔道になった事により失われた柔術の技法が、合気道では今でも用いられている、と言えるかも知れません。

合気道にあって柔道ではあまり行われない技法の特徴として、関節を攻める投げ技や当て身、武器技、そして多人数を相手にする技などがあります。

関節を攻める投げ技としては、「小手返し」や「四方投げ」などが挙げられます。いずれも合気道の代表技ですが、「小手返し」は手首関節を、「四方投げ」は肘関節と肩関節を極める様に施す投げ技です。ちなみに、関節を攻める投げ技は、柔道では「禁じ手」(反則)です。

次に当て身ですが、いわば打撃技です。使用する身体の箇所に限定はありません。主に拳や手刀による打撃になりますが、例えば腰の後方による強い体当たりなども当て身の概念に含まれます。

そして武器技ですが、短刀や剣、杖(じょう:木製の棒の様な武器)で攻撃してくる相手に素手で応じる技であったり、剣や杖を用いた技、いわゆる合気剣と合気杖があります。

最後に多人数を相手にする技ですが、多人数掛けと多人数取りがあります。多人数掛けは多人数の相手に同時に身体を掴ませた場合に施す技であり、多人数取りは一斉に向かって来る多人数の相手を捌いていく技です。

ただ、柔道においても「形」と呼ばれる「型稽古」は存在し、その中で当て身や武器技があるようです。しかし、実際にどのくらい稽古されているかについては、道場や個々人に依るかも知れません。

柔道と比べるとマイナーかも知れない合気道ですが、少しでもご興味を持って頂く切っ掛けになれば、これ幸いです。